東京地方裁判所 昭和44年(秩ろ)45号 決定 1969年7月11日
被制裁者 弁護士 山根二郎
決 定
(被制裁者氏名等略)
右の者に対する法廷等の秩序維持に関する法律による制裁事件について次のとおり決定する。
主文
本人を過料三〇、〇〇〇円に処する。
(事実の要旨)
別紙記載のとおり。
(適用した法条)
法廷等の秩序維持に関する法律第二条第一項
(別紙)
本人は、昭和四四年七月一一日東京地方裁判所刑事第七〇一号法廷において被告人大沢和夫外一二名に対する兇器準備集合、建造物侵入、公務執行妨害被告事件の第二回公判開廷中、午前一一時一五分ころ、裁判長が「証人調を行う」旨を告げたところ、弁護人が総立ちになり本人が「裁判長、何も反対尋問権に対して答えていないじやないですか。」と発言したので、裁判長は、「裁判所は法規に基いて手続を進めており、弁護人が在廷しておれば適時の段階で証人尋問権、反対尋問権を行使することが充分にできる機会がある。」と述べたが、本人は「それができないんだ」と怒号した。裁判長は全弁護人に対して再三にわたり着席を命じたが、弁護人全員はその命令に従わずこもごも「弁護人の質問に対して答えていないじやないか。」「弁護人の意見を聞かないんですか、ただ坐れというのは、それは何ですか。」「弁護人の発言を封じるのですか。」「答えていませんよ何も。」等と発言し、法廷内は喧騒をきわめ、裁判長は「静しゆくにしなさい、発言を禁止する。」旨命令を発したが、弁護人等はその命令にも従わず、さらにこもごも「我々は憲法と刑事訴訟法に則つて議論を展開しているんじやないですか、それに対してただ法に従つてということでは答えになつていないですよ。」等と発言し、本人は裁判官席前まで出て裁判長に対して「我々は違法であることを抽象的に言つているのではないですよ、しかも現に証人喚問権や反対尋問権はどうなつているんですか。」と怒号したので裁判長は本人に対して退廷を命じたが本人は任意に退廷せず、警備員の退廷執行に対しても、その手を払いのける等して退廷に応ぜず、さらに「退廷するから答えて下さい。」と裁判官席につめより、法廷内が喧騒をきわめ、全弁護人が裁判官席前、書記官席前につめより、さらにこもごも「何で退廷なんだ。」「裁判長は何も答えていないじやないか。」等と怒号したので裁判長は南木弁護人、水上弁護人および本人に対して退廷を命じた。本人を含む右三弁護人は任意に退廷せず、裁判長の再三にわたる退廷命令および警備員の「退廷して下さい。」との退廷命令執行に対しても、警備員の手を振り払う等して退廷命令に従わず、さらに弁護人はこもごも「法廷は納得の場でしよう。」「弁護団を代表して言つているんですよ。」「納得できないと言つているときに何故理解できないのですか。」等と発言し、このとき暴言をはいた水上学弁護人に拘束を命じたところ、法廷内は喧騒をきわめ、弁護人がこもごも「拘束とは何ですか。」「我々は質問に対し何も答えていないと判断しているので回答をいただきたいと言つているんですよ。」「拘束の理由は何か。」等と発言し、さらに本人は裁判長を指さし「答えなさい。」「答えなさい。」「答えなさい。」と裁判官席につめより裁判長の再三にわたる着席命令、発言禁止命令、退廷命令にも従わず審理を妨害し、裁判所の威信を著しくきずつけたものである。